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ドラゴン・テレキャスターの歴史
#機材 #テレキャスター #ジミーペイジ

レッド・ツェッペリンの“ドラゴン・テレキャスター”は、単なる派手なペイントギターではない。あれはジミー・ペイジが、自分の音楽的アイデンティティを一本の楽器に焼き付けたような存在だった。もともとのベースになったのは1959年製のフェンダー・テレキャスターで、ジェフ・ベックがヤードバーズ時代のペイジに託したことで知られている。そのギターは最初、工場出荷時のホワイト・ブロンド仕上げだったが、ペイジはまず丸いミラーを貼り付けた“ミラー・ギター”の姿に変え、その後さらに塗装を剥がし、自ら手描きであの有名なドラゴン・ペイントを施した。フェンダーも公式に、このギターがホワイト・ブロンドから“ミラー・ギター”を経て、最終的にペイジ自身が手描きした唯一無二の姿になったと説明している。

このギターが“いつからの楽器か”という点でいえば、元の個体は1959年製で、ドラゴン仕様になったのは1967年ごろとされる。ヤードバーズ後期からペイジの手元で存在感を強め、レッド・ツェッペリン初期には中心的な一本となった。フェンダーはこのテレキャスターを、1969年にラジオから流れた「Good Times Bad Times」の衝撃を支えた一本として位置づけており、実際にこの楽器はレッド・ツェッペリン初期サウンドの重要な一部だった。一般にはレスポールの印象が強いペイジだが、少なくとも初期の決定的な局面では、このドラゴン・テレキャスターが象徴的な役割を果たしていたことは間違いない。

では、なぜペイジはあの大胆なペイントを施したのか。ここがこのギターのいちばん面白いところだ。ペイジ本人は、もともとそのギターを“自分のもの”にしたかったという趣旨の発言をしており、さらに後年のインタビューでは、ドラゴン・テレの発想は“新しい命を吹き込み、自分のアイデンティティを楽器そのものに混ぜ込むこと”だったと語っている。つまり、単なる装飾ではなく、ヤードバーズからレッド・ツェッペリンへ向かう自分自身の変化を、視覚的にも楽器に刻み込む行為だったわけだ。サイケデリックな時代の空気を反映していたのはもちろんだが、それ以上に、ペイジがギタリストとしての個性を明確に打ち出すための“署名”のような意味合いがあったと考えると、このペイントの意味はより深く見えてくる。

そして多くのファンが気になるのが、“なぜ今はないのか”という点だ。正確には、あのオリジナルのドラゴン・ペイントが長くそのままの形で残らなかった、というのが実情に近い。ペイジによれば、1969年にツアーへ出ているあいだに、そのギターは留守中に他人の手で塗装をいじられ、ドラゴンのペイントが台無しになってしまったという。別のインタビューでも彼は、誰かに絵を“めちゃくちゃにされた”ため、最終的にはナチュラルウッドの状態へ戻さざるを得なかったと振り返っている。つまり、ギター本体そのものが消滅したわけではなく、私たちが思い浮かべる“あのドラゴンの姿”が失われてしまったのである。このエピソードが、ドラゴン・テレキャスターをさらに伝説的な存在にしている。現役で活躍した時間は決して長くないのに、その印象だけは異様なほど強く残り続けているのだ。

それでも物語はそこで終わらない。年月を経て、フェンダーはこの伝説のギターを正式にモデル化し、ジミー・ペイジ本人と協力しながら復刻を行った。2019年前後に登場したシグネチャーおよび関連モデルは、単に雰囲気を真似た量産品ではなく、フェンダー自身が“ペイジ本人が手描きしたアイコニックなアートワーク”を再現したオマージュだと明言している。報道でも、フェンダーがペイジと手を組み、彼の1959年製テレキャスターの“Mirror”期と“Dragon”期の両方を再現したことが紹介されている。つまり、この復刻は名前貸しのような企画ではなく、本人の歴史認識や美意識を踏まえた“監修された再構築”として受け止めるのが自然だろう。オリジナルのドラゴンは失われても、その記憶と意味を現代に残す作業には、しっかり本人が関わっていたのである。

ドラゴン・テレキャスターが今も語り継がれる理由は、見た目のインパクトだけではない。1959年製のテレキャスターが、ジェフ・ベックからジミー・ペイジへ渡り、ペイジの手でペイントされ、レッド・ツェッペリン初期の音を支え、その後は失われた姿ゆえに神話化され、さらに本人監修のもとで現代に甦った――この流れ全体が、一本のギターを超えたロック史そのものだからだ。ドラゴン・テレキャスターは、名器というより“変身の記録”であり、ジミー・ペイジが自分の時代を切り開いていく瞬間を封じ込めた象徴なのである。

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